計画の技術

「小手先ではなく、すべての計画領域に共通する根本的な計画力があるはずだ」

問題を抱え込んでいる組織の人たちには周回軌道を外れる勇気と瞬発力が必要だ (2/2)

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プロジェクトマネジメント基本行動定着活動については、これまでも何度か取り上げてきました。この活動をスタートした背景には、プロジェクトの問題を早期発見することでプロジェクトに起因する事業問題を未然に防ぎたいという組織の思いがありました。問題発見さえうまくいけば、問題解決は何とかなると考えていたからです。

ところが、まもなく私たちは悲しい現実を目の当たりにすることになりました。問題解決がうまくいかなかったのです。

 

私たちは方針を切り替え、 問題の早期発見を問題解決の第一歩と位置付けました。そして、プロジェクトに関連する様々な事業問題の解決を最終目標に据えました。

そんなわけで、私たちは組織の問題解決能力を強化すべく、問題を組織内で共有するための仕組み作りに取り組むことになりました。前回の記事(1/2)で紹介したのがそれです。

 

ところが、行く手にはもっと深刻な事態が待ち受けていました。

それは、当時の幹部たちのこの言葉によく表われています。

 

「現場は確かに忙しいが、問題解決の時間がまったく取れないわけではない」

「明確な“できない理由”があるわけではないないのに、なぜか問題が放置されてしまう」

 

明確な理由がないのに放置されてしまう… これほど厄介なことはありません。

ある幹部はこう言いました。

 

「誰かが隠ぺいしていたとしか思えない!」

 

気持ちはわかりますが、おそらく、現場は隠ぺいしていたわけではありません。意思を持って隠していたわけではなく、“なんとなく” 言いそびれてしまっていたのです。

これには、ビジネス環境に対する緊張感の欠如や「きっとなんとかなるだろう」という根拠のない楽観主義が原因していたのだと思います。

 

前回は“誰もボール(問題)を拾わない”という大企業にありがちな現象について書きましが、実は、緊張感の欠如や根拠のない楽観主義もまさにこれと同じです。いわゆる“大企業病”というヤツです。

 

この状況の深刻さは、特効薬がない点にあります。仕組みを作り上げたところでおいそれとは効きません。長い年月をかけて培われてきた組織文化や組織体質に関わる根深い課題だからです。

 

  • 問題をひとりひとりがため込まなくて済むような組織文化の醸成

 

これが、次に取り組まなければならないテーマとなりました。

 

問題がエスカレーションされないのは現場の緊張感の欠如や根拠のない楽観主義の象徴あり、大企業病のひとつです。

実は大企業病は、業績が安定している企業に限った話ではありません。業績不振に陥っている社内にすら、大企業病は蔓延っています。危機感の真っただ中にあるはずの社員たちは、口では「うちはヤバい」と言いますが、この危機感が行動には結びつくことは稀です。

 

なぜでしょうか…

 

昭和の高度成長期ならまだしも、今のような不安定な時代では、緊張感の欠如や楽観主義の多くは“親方日の丸”的な安心感に由来しているわけではありません。その証拠に、所属部門が事業破綻したところで、このような楽観主義が大企業の社員から消えることはありません。

 

そこで、私はこう考えます。

 

“現場の緊張感の欠如や楽観主義は、ひとりひとりの諦めや無力感と表裏一体化している”

 

心の中に潜む諦めや無気力感が、まるでマイナスをプラスで打ち消すがごとく、それとは正反対に緊張感の欠如や根拠のない楽観主義として表面化しているというわけです。

 

つまり…

 

“裏側にある諦めや無力感を解決しない限り根本的な解決はない”

 

そういうことです。

 

抱え込んで山積している問題に正面から向き合うには、これまでとは違う行動を起こさなければなりません。コミュニケーションの相手も、会話の質も違ってきます。

 

“問題のエスカレーションには周回軌道を外れる勇気と瞬発力が要求される”

 

これは極めて重要な気づきですが、気付いたからと言って、今を生きる日本のビジネスマンにとってこれほどの難題はありません。気力を失い、思考や行動が単調になりがちな彼らには、周回軌道を外れる勇気や瞬発力など、あろうはずがありません。

 

そんなわけで、結論として私たちが早急に取り組まなければならないことがコレです。

 

“諦めや無力感に対抗するための組織的な取り組みづくり”

 

このところ、私は、このような状況下にある現場にガバナンスを持ち込むことに消極的です。ガバナンスを持ち込んだところで現場を混乱させるだけで、うまくいかないからです。

日本の現場は、ひとりひとりの当事者意識に支えられています。当事者意識に働き掛けない限り、諦めや無力感といった厄介者を排除することはできません。

 

そんな私はいま“各人の責任意識”にこだわって、幹部や上位管理者には各人の責任を自覚させる働き掛けを企んでいます。

ポイントとなるのは責任の定義です。

 

“責任の範囲は、問題を識別してから解決するまでのことではなく、問題を拾い上げるところから始まり、問題を解決するまでのことである”

 

組織ピラミッドの中にいる全員が、自分の手元に情報が届くのを待って行動するのではなく、自ら手を伸ばして情報を取りにいくことが大切です。

現場から距離が空きがちな幹部や上位管理者はなお更です。

 

“問題を適切にエスカレーションするには責任の連鎖が欠かせない”

 

責任の連鎖がうまく回り始めれば組織のチームワークは見違えるほど改善されます。その結果、問題の多くは適切な権限を持った人たちによって解決されるようになり、現場に充満していた諦めや無力感は徐々に解消され、これが更なる問題解決を促すはずです。

いわゆるポジティブループです。

自分に解決できないことは上位者といっしょになって解決する、そんな組織文化が育まれるはずです。

 

“自分ひとりではない”

“みんなで取り組めば問題は解決する”

 

私たちが目指さなければならないのは、そんな職場づくりではないでしょうか。

 

 

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