計画力を強化すればするほど、進捗会議を通じて問題を早期に顕在化できるようになります。ところが、問題を抱え込んでいる組織では、せっかく顕在化したこれらの問題をうまく解決できていません。
- 問題がエスカレーションされず、途中で消えてしまう。
- 誰も問題を拾わない。
こんな課題を抱えている組織はそこら中にあります。
今回はそんな話をしましょう。
なにも、現場は好き好んで問題を放置しているわけではありません。自分たちで解決できる問題は解決します。それすらままならない現場も少なくはありませんが、それは過負荷などの組織的問題が邪魔しているからであって、たいていの現場は問題を解決しようと必死に頑張っています。
それでも解決できない問題があるのは、問題が自分たちの手に負えないからです。現場で手に負えないこういった問題を解決するには、上位の人たちへエスカレーションするしかありません。
ところが、これが簡単ではありません。なぜならエスカレーションには、問題を解決する以上に手間がかかることや、精神的負担が付きまとうことが多いからです。そんなとき、担当者は“問題が生み出す悪影響”と“エスカレーションに必要な自己負担”を天秤にかけてしまいがちで、場合によっては、誤った判断で後者に軍配をあげてしまいます。
エスカレーションされずに放置された問題は、そのうちに霧の中へと消えてしまいますが、物陰でひっそりと成長を続けます。そして、手が付けられないほどの大問題に発展し現場では抱え込めなくなった時、それは幹部たちの目の前に忽然と姿を現します。
「こうなる前に、なぜ気付かなかったのか!」
幹部がそう言いたくなるのも無理ありません。
誰が問題を放置していたのかと犯人探しを始める幹部もいますが、これは単なる時間の無駄で、おそらく再発防止にもつながりません。
それどころか、こうなってしまうと、犯人探しすらままならないのが普通です。なぜなら、それほどの大問題ともなると多くの人たちが気付いていたに違いありませんし、少なくとも予感はできたはずだからです。言ってみれば、関わっていた人たち全員が加害者なわけです。
「うちの組織はなぜ大問題が突発するのか?」
幹部たちはよくこう口にしますが、この課題を追求する人はいません。
ところが私のような物好きは、このメカニズムが気になってしかたありません。
おそらく理由はさまざまです。
真っ先に思い浮かぶのは、上司が忙しくて取り合ってくれない、上司の態度が高圧的で話す勇気が湧かないなど、上司や組織に起因する原因です。
その中でも私が特に気がかりなのが、現場から聞こえてくるこんな発言です。
「上司にエスカレーションしたところで“君の頑張りが足りないだけではないか”とばかり、ブーメランのように自分に返ってくる」
「これでは、解決どころかストレスが増すいっぽうだ」
大企業でよく見かける「誰もボール(問題)を拾わない」というヤツです。
このような状況は、ピラミッド型組織のあらゆる組織階層で発生しています。これを放置しておくと、とんでもないことになりかねません。
そこである時、私たちは、大企業が抱えるこれらの悩みを解決すべく立ち上がりました。
そんな私たちの当面のテーマはコレでした。
- 問題を組織内で共有するための仕組み作り
私たちは問題のエスカレーションにクライテリア(判定基準)を設定し、クライテリアに沿って階層的に議論の場を設け、定期的に開催しました。
この施策は一定の成果を収めましたが、問題放置を根絶するには至りませんでした。
次の一手の必要性に迫られた私たちは、これまでとは逆に、属人的でアナログな手法に頼ることにしました。それが“水すまし”です。
現場との何気ないコミュニケーションから問題を感じ取り、その問題を適切な人物にエスカレーションして対応状況を見守る“水すまし”のような役割の人物を配置することにしたのです。
“水すまし”を担う人物には人懐っこさに加え、幹部たちとの太いパイプが欠かせません。現場と幹部の両方から頼りにされているベテランがそのイメージですが、そんな人物は希少です。
ましてや、そのような人物は既に重責を担っている場合が多く、本人やその周辺の人たちを口説き落とすのは至難の業です。
この時もまさにそんな状況でしたが、幹部の英断でよい方向に進むことができました。
このように、苦労が実を結んでエスカレーションの仕組みをつくり上げることができたとしても、すべての課題をきれいさっぱり解決できるわけではありません。
なぜならこの話は、組織を構成するひとりひとりの“周回軌道を外れる勇気と瞬発力”へとつながる、根深い話だからです。
私が気になっているのは現場の“諦め”や“無気力”です。
~ 次回に続く ~
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