計画の技術

「小手先ではなく、すべての計画領域に共通する根本的な計画力があるはずだ」

現状打破を目指すなら、欧米の成功事例を日本向けにアレンジしよう(3/3)

 

3回構成でお届けしている今回のテーマですが、今回はその最終回です。

 

1回目では、欧米企業の成功事例を日本企業が導入する際の心構えについて書きました。

欧米企業と日本企業では文化や価値観が違うので、欧米のベストプラクティスを参考にして変革を進める際には、両者のギャップをよく理解し、日本企業の良さを実装方法にうまく埋め込まなければなりません。

 

そのためのポイントはふたつです。

 

  • 全体の底上げに時間をかける。
  • 権限委譲の方法を工夫する。

 

2回目となった前回は「全体の底上げに時間をかける」について具体的に説明しました。

日本人は世界の固有種です。いざ変革に着手してみると、欧米企業との文化や価値観の違いは皆さんの想像を超えます。この違いは、勇み立つ皆さんの心を折ることでしょう。

 

私の解決策は、私たちも変化することです。

私たちは欧米の成功事例を日本向けにアレンジするだけでは不十分で、ある程度は欧米型に歩み寄らなければなりません。日本人がかたくなに世界の固有種であり続ける限り、私たちは毎度、アレンジに苦しむことになるでしょう。

ただし、闇雲に変わろうとしてもうまくはいきません。私たちはまず、どこを変え、どこを残すかべきかを判断しなければなりません。

 

ところが、文化や価値観は、口で教え込んでも変わるものではありません。大切なのは、シンプルなルールをつくり、時間をかけて、腹落ちするまで根気よく付き合うことです。彼らの一員として目的意識を共有し、熱意をもって接することです。私はこれを、いわゆる「躾(しつけ)」のようなものだと表現しました。

 

さて、最終回の今回は「権限委譲の方法を工夫する」について考えます。

 

欧米企業はトップマネジメントが意思決定し、組織ピラミッドの縦軸に配置された多くの戦略スタッフがこれを現場活動へと緻密に落とし込みます。落とし込みにはKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)が使われます。機能チームごとにKPIが展開され、それはさらに各個人へと引き継がれます。各個人は、明文化された自身の役割業務を遂行しながらKPI達成を目指すわけですが、役割業務以外のことには手を出しません。お互いの利害が一致して連携して動くことはありますが、これは合理性の追求であって、日本企業でよく見かける助け合いのようなものはありません。

この点においては、私は日本企業の方が優れていると思っています。

 

日本企業が得意とする現場主義、現場メンバーの積極性、高い当事者意識などは欧米企業の硬直的な権限移譲を遥かに凌駕していると私は考えいています。

 

欧米企業の成功事例に感化され、固い決意で変革に挑んだところで、勢い余って日本企業の良さをすべて失ってしまったのでは元も子もありません。

これは、日本人の真面目さゆえに起こり得ることです。

 

そこでポイントとなるのが、権限委譲の在り方です。

欧米企業では、個人に対して綿密な業務指示とKPIを提示し、その範囲内で権限を委譲します。私が思うに、このやり方が私たち日本人の気質に合いません。

 

日本企業の場合は、権限委譲の対象を組織ピラミッドのもっと上位に設定すべきです。

 

例えば、私が組織設計するのであれば、権限移譲の対象を個人ではなく事業部や配下の部課といったチームに設定します。トップマネジメントや縦軸の戦略チームが各チームの成果を適切に評価し、必要に応じてコントロールするというやり方です。

 

このやり方は下手をすると部分最適や属人性につながりかねないので、そうならないように、仕組みやルールを工夫することが大切です。

仕組みやルールの定着にあたっては、前回説明した「全体の底上げ」がきっと後押ししてくれることでしょう。

 

「全体の底上げ」と「権限委譲の工夫」をうまく織り交ぜつつ欧米の成功事例を日本的にアレンジできれば、結果は自ずと付いてきます。

 

輝かしい結果を残している欧米企業はたくさんあります。彼らを無視していたのでは、私たちは世の中の変化に取り残されてしまいます。しかし、私たちには、欧米企業にはない良さもたくさんあります。

良さを伸ばし、欠点を補いながら、全体としての完成度を追求することで、世界に名だたる日本企業を目指しましょう。

 

 

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