計画の技術

「小手先ではなく、すべての計画領域に共通する根本的な計画力があるはずだ」

「できるんじゃないか」というポジティブなひと言が、現場の計画力を育む

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会議の場でよく耳にする言葉があります。

 

「できないんじゃないか」

 

このひと言が参加者全員を意気消沈させます。

計画の弱点を突くこのひと言が可能性を潰すのです。意見を否定された計画者は言葉を失い、心の中で「参りました」とつぶやきます。

 

あるプロジェクト進捗会議の場で、こんなやりとりがありました。

 

プロマネ「お客様の意識を変えなければ仕様変更は続きます。今のままでは納期に間に合わなくなります」

幹部      「お客様の意識を変えるなんて、無理に決まっているだろ。そんな話を切り出したらお客様との関係はおしまいだ」

プロマネ「開発スケジュールをお客様と共有してみてはどうでしょうか。仕様変更の悪影響を理解してもらえれば、意識も変わるのではずです」

幹部        「無理だよ。責任回避だと叱られるだけだ。期間短縮のために何ができるのか、そこに頭を使ってくれ」

 

こうやって会議は幕を閉じました。すべての参加者にとって無駄な時間が流れただけです。

原因は、幹部の「できないんじゃないか」のひと言にありました。マイナス思考からいい計画は生まれません。

それならば、いっそのこと、こう変えてみてはどうでしょうか。

 

「できるんじゃないか」

 

参加者たちはこの言葉に勇気づけられ、実現性を高めるための手段をあれこれ考え始めるに違いありません。

できないかもしれないということは、裏を返せばできるかもしれないということです。「できないんじゃないか」を「できるんじゃないか」に変える、それだけで場の雰囲気は劇的に変わります。

幹部が計画をいったん受け入れるだけで、議論は具体化するはずです。

 

幹部        「お客様の意識を変えさせるのは並大抵ではないぞ。何かいい方法はあるのか?」

プロマネ「開発スケジュールをお客様と共有してみてはどうでしょうか。仕様変更の悪影響を理解してもらえれば、意識も変わるのではずです」

幹部        「いったん開発スケジュールを渡すと、厳しく進捗を管理され始めるぞ」

プロマネ「お客様とにらみ合いが続いている状況下ではそうですが、お客様に当事者意
識を醸成できれば、その心配はなくなります」

幹部        「どうやってお客様の当事者意識を醸成すればいい?」

プロマネ「お客様の言いなりになるのではなく、私たちもアイディアを出しましょう。お客様の立場に立っていっしょに仕様を考えましょう」

幹部        「なるほど。いばらの道だが、皆さんの情熱しだいだね。始めたらやり切らないとだめだよ。逆に信頼を失ってしまうからね」

プロマネ「私たちには専門家としてやってきたノウハウがあります。ぜひやらせてください」

 

こんな具合になれば、組織の課題解決力は格段に向上するはずです。

 

「できないんじゃないか」の例

  • 彼がウンとは言わないからできないんじゃないか?
  • 技術的に無理なんじゃないか?
  • うちの会社の実力じゃ不可能だよ。
  • リソースが足りなくてできないよ。
  • 今の組織体制じゃ無理だな。

 

「できるんじゃないか」の例

  • 彼をウンと言わせることができれば、できるなあ。
  • こんな技術さえあればできるが不可能じゃない。
  • 今の実力じゃ難しいが、それも取り組み姿勢しだいだ。
  • どこかからリソースを融通すればいいんだな。
  • 組織体制が悪いなら、体制を変えればいいよ。

 

課題を抱えた組織の幹部は、その重苦しさから、現場を否定する傾向が強いようです。「できないんじゃないか」と現場を否定したら、次に続くのは「四の五の言わずにやれ」のひと言です。いわゆるトップダウンの強制です。これが現場に主体性を失わせます。主体性の低い組織に計画は定着しません。

 

日本の組織は、良くも悪くも現場に依存しています。トップダウンが悪だとは言いませんが、現場を活かすためにはタイミングを計らなければなりません。もしボトムアップのタイミングなら「できるんじゃないか」で計画の可能性を広げるほうが得策です。

 

これは目標設定のシーンにも通じます。

日本の組織は「できる目標」を設定しがちです。昔ならいざ知らず、日本企業の劣勢が目立つようになった昨今は、これでは世界に通用しません。競争環境の中で自ずと決まってくる目標を受け入れ、目標達成に向けて「手段」を積み上げる姿勢が大切です。このパラダイムシフトを妨げているのも、幹部たちの「できないんじゃないか」のひと言です。

 

ポジティブ思考は、現場の可能性を引き出します。

ポジティブ思考を標榜している幹部たちですら、部下を信じることができず、提案された計画に対してネガティブな言葉を繰り返すだけです。

否定されると計画は死にます。逆に、その可能性を信じてもらえれば計画は命を吹き込まれます。計画は、ポジティブ思考から育まれるのです。

まずは部下を信じ、まわりの人たちを信じて「できるんじゃないか」にトライしてみましょう。

 

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さらに知りたい方にはブログ「成果のない問題を解くための力」の
「目標は”決める”のではなく”決まる”ものであり、目標達成の手段は
”積み上がる”のではなく”積み上げる”ものである」という回を読むこ
とをお勧めします。

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