計画の技術

「小手先ではなく、すべての計画領域に共通する根本的な計画力があるはずだ」

計画は大事だが、未来を決めるのは計画ではなく目標設定だ [目標設定の原則](3)

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3回目となる今回も、目標設定の話の続きです。

 

1回目では、パフォーマンスを向上したいなら計画よりも目標設定のあり方のほうが大切という話をしました。

目標設定の方法についても触れました。

私がお勧めするのは “トップダウン型” であることをお伝えしました。これは組織幹部が目標を設定し、現場は与えられた目標を達成するために手段を積み重ねるというやり方です。

 

2回目ではトップダウン型における目標設定の流れを以下のように説明しました。

  1. 目的を理解する
  2. 目的と整合した目標を設定する
  3. 目標達成に向けて手段を洗い出す
  4. 手段の実現性を評価する
  5. 手段の成果を積み上げることで目標達成できるかを評価する
  6. 手段の実行状況を把握するための評価指標を設定する

 

トップダウン型の狙いは、現場のストレッチでした。

ボトムアップ型では、現場は自分たちの実力に合わせて目標設定するので、殻を破ることができません。パフォーマンスを向上するには新しいチャレンジが必要です。その点、トップダウン型は、チャレンジ精神を引き出します。

 

前回まではこのような話をしてきたわけですが、とはいえ日本の大部分の組織では、ボトムアップ型の目標設定を採用している、もしくは採用しないまでも何となくそうなってしまっています。

そんな日本型の組織に育った人たちの中には、トップダウン型の目標設定の流れを説明されたところで、他人事のように思えて、実行のイメージがわかないという方が多いのではないでしょうか。

そこで今回と次回は、トップダウン型の目標設定をさらに具体的に解説することにしました。

 

トップダウンである以上、経営幹部が目標を設定するわけですが、そのためには、根拠となる情報が必要です。「○○だから目標を△△と設定する」の○○に相当する部分です。

○○は目的に影響を与える情報と考えられます。なぜなら、目標は目的を達成するための目印だからです。“こうなりたい” を目指すためには目印となる目標が必要です。

 

そんなわけで、今回はまず、目標設定に影響を与える要因について考えましょう。

事業計画を例として取り上げます。

 

トップダウン型の目標設定に影響を与える情報の多くは “圧力” に起因します。圧力には、大きく分けて “内部” からの圧力と “外部” からの圧力のふたつがあります。これらの圧力が組織幹部に作用し、彼らの目標設定に大きな影響力を発揮します。

事業計画における圧力の代表例を挙げておきましょう。

 

[内部からの圧力]

  • ビジョン
  • 市場で目指すポジション
  • 事業規模成長への圧力
  • 株主からの要求
  • 株主の投資意欲への影響
  • 他社との比較

 

[外部からの圧力]

  • 競合競合からの圧力
  • 顧客からの圧力
  • ビジネスパートナーからの圧力
  • 市場への新規参入者からの圧力
  • 代替品の圧力

 

こういった圧力や圧力に関する情報が組織幹部に影響を与え、彼らの意志決定、つまり目標設定の根拠情報とまります。

もしこれらの圧力を無視して現場の言いなりとなり、ボトムアップで低い目標を設定しようものなら、内外からの圧力で、この組織は近い将来、世の中から抹消されるに違いありません。

 

次は、トップダウン型の目標設定に役立つ質問です。他にもいろいろとあるのでしょうが、考えるきっかけとして、まずは私が思いつくものを列挙します。

 

  • 目的を理解する
    • 目的は、どのような背景の上に成り立っているのか?
    • 目的は、具体的な状況を表わしているか?
    • 目的を達成することによって、何がどう変わるのか?
    • どんなステークホルダーが存在するのか?
    • 目的にはどんな前提があるか?

 

  • 目的と整合した目標を設定する
    • どのような観点から目標を設定するのか?
    • 目標は、どの程度が適切か?

 

  • 目標達成に向けて手段を洗い出す
    • 目標を達成するための手段にはどのようなものがあるか?
    • 手段は具体的か?
    • 手段は実行可能か?

 

  • 手段の実現性を評価する
    • 有識者の評価は勘案したか?
    • 経営資源の投入など、手段の実現性を高める効果的な方法は明らかか?
    • 手段の実現性を担保する際の障壁は明らかか?

 

  • 目標達成できるかを評価する
    • 目標達成に向けたそれぞれの手段の貢献度はどの程度か?
    • 手段ごとにどの程度の期待をもてるか?
    • 手段を積み上げることで目標は達成可能か?

 

  • 指標を決める
    • 手段の効果を測定するための指標は何か?

 

質問の根底には、2回目で紹介した目標設定の流れがあります。この流れの中で、これらの質問はきっといいヒントになります。

 

さて、次回はいよいよ最終回となる4回目です。ここでは、トップダウン型の目標設定の具体例を紹介する予定です。

 

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