計画の技術

「小手先ではなく、すべての計画領域に共通する根本的な計画力があるはずだ」

マネジメントが少しでも気を抜くと、現場は手当たり次第に作業に着手してしまう(1/2)

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現場はプロ集団です。プロは自分のペースで仕事をしたがるものです。

その様子は無邪気そのものです。

彼らには微塵の悪気もありませんが、計画的に物事を進めたい私たちにとって、これはかなり困りものです。

 

現場はこう言います。

 

「積極的に仕事をして何が悪い?」

 

確かにその通りなのですが、そこにはリスクが潜んでいます。

例によって、プロジェクトマネジメントを例にとって話を進めることにしますが、事業計画であれ、イベント計画であれ、似たようなことは言えます。

 

プロジェクトがコストオーバーランする原因のひとつに、想定を超える人件費があります。

そして、その多くは「手戻り」に起因しています。

 

手戻りの原因にはいろいろありますが“着手のタイミング”もそのひとつです。

情報量は時間の経過とともに増え、質も高まります。生煮えの状態で先走ってしまえば、その分、手戻りのリスクが増加するというわけです。

これが、現場の「積極的に仕事をして何が悪い?」というプロ意識からもたらされます。

 

先走れば先走るほど、抱え込む不確定要素は増えます。しかし、不確定要素をすべて排除した後に着手したのでは、多くの場合、タイミングを逸してしまいます。このバランスがなかなか難しいわけですが、このような難しい判断を、現場のエンジニアたちは、あまり悩まずに、勘と経験で下しています。

「悩まずに」と言えば“即断即決”のイメージで聞こえはいいですが、要は、ビジネスに対して気楽なだけです。

これが組織にとって大きなリスクをもたらすことは明らかです。

 

そこで「計画」の出番です。

計画作成の場は、このような難しいバランスを議論するのに絶好の機会です。

 

計画するには、着手のタイミングを決めなければなりません。自ずと、積極派(早く着手したい人たち)と慎重派(条件が整ってから着手したい人たち)の議論は盛り上がります。お互いの主張の根拠がつまびらかになるに連れ、参加者の理解はぐんぐんと深まります。

 

進捗会議の場も同じです。「なぜ着手したのか」「どうして着手できたのか」を追求することで、同じ議論が始まります。

双方が納得いくまで議論すれば、そこに一体感が生まれます。一体感があれば、たとえ手戻りが発生したとしても、解決意欲は高まるはずです。

 

つい最近ですが、こんなことがありました。

進捗会議の場での出来事です。

 

プロマネ 「以上ですが、このほかに何か言い残したことはないですか?」

メンバー 「すみません。試験報告書はすでに完成しました」

プロマネ 「おかしいですね。機器Cの熱耐久試験が終わっていないので、試験報告書が完成しているはずないのですが…」

メンバー 「機器Cの熱耐久試験では、おそらく問題は発生しないと思います」

プロマネ 「そんなことはありません。現に、試験は始まったばかりですが、すでにいくつか問題が発生しています。報告書の提出期限はまだ先です。なぜ報告書作成に着手したのですか」

メンバー 「なぜというか… 手が空いていたので、その間に作成しました」

プロマネ 「半分は書き直しになると思いますが、これまでに何時間かけたのですか」

メンバー 「40時間かけました」

 

40時間の半分、つまり20時間分は作業が無駄になったわけです。メンバーは「どうせ手が空いていたのだから」と言いますが、その20時間分、およそ20万円分のコストが水の泡となって消えたわけです。

きちんと考えれば、今やっておいたほうがいい作業は他にもあったはずです。

 

プロジェクトマネジメントの現場では、こんなことは日常茶飯事です。

このような出来事にひとつひとつ、きちんと対処していくことは、現場のコスト意識向上にもつながります。

 

次回は、このテーマをさらに掘り下げていきます。

 

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