計画の技術

「小手先ではなく、すべての計画領域に共通する根本的な計画力があるはずだ」

計画の過程で表面化してしまった課題に対して "見て見ぬふり" をしないための方法

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計画を立てていると、さまざまな課題が表面化してきます。これは計画の醍醐味のひとつではありますが、これが困った状況を招くのも事実です。なぜなら、表面化した課題を放置したままでは、その先の計画に進むことができないからです。

 

表面化した課題をどのようにして解決するか、それも含めて計画なのです。

 

例えば試行錯誤を通じてでしか製品仕様を決定できないことが計画の過程で明らかになったとしましょう。計画を先に進めるには、この試行錯誤の中身に当たりを付ける必要があります。

 

・何に対して試行錯誤するのか?

・どこからどこまでを試行錯誤するのか?

・どのような内容で試行錯誤するのか?

・どのようなタイミングで見切りをつけるのか?

 

課題解決に向けたシナリオは、課題の内容や影響度、緊急度などによってまちまちで、しっかりと検討するには相応な時間がかかります。気の利いたシナリオを描くには、専門家の知見や過去のデータが必要になることだってあるでしょう。

計画者は時間に追われながらこれに取り組まなければならず、かなりの負担です。

 

課題解決を計画に落とし込むためのシナリオに代わるよい方法はないものか、私はいろいろと考えました。

手に入れたいのは、さまざまな課題に通用する汎用的な方法です。「汎用的=実用的でない」はよくあるパターンですが、今回は、そうならないように気を付けました。

 

そこで目を付けたのが “課題解決の難易度” です。

難易度の予測は課題解決の第一歩だと私は考えています。

 

しかし、だからといって課題解決の難易度をどうやって決めればいいのか、私は悩みました。

そして最終的に “手戻りの回数” と “手戻りの規模” で予測することに行き着きました。

これは、コンサルティングの現場で鍛え上げてきた、シンプルながらも実践的な方法です。

 

手戻りはイタレーション(反復)とも呼ばれます。

例えば1回ぽっきり、行ったきりの課題解決であれば、課題解決の難易度は低いと考えます。逆に手戻りが何度も繰り返される可能性のある課題は難易度が高いと考えます。

 

手戻りの規模とは、やってきたことのどこまで遡ってやりなおさなければならないのか、その規模感のことです。若干の手戻りが予想されるだけであればロスも少なく、課題解決の難易度は低いと考えますが、プロセスの起点にまで遡るということになると難易度は極めて高いと考えるのが妥当です。

 

手戻りの具体的な内容や期間は課題の種類や対象領域などによってさまざまなので、ここでは目をつぶります。難易度に当たりがついた後に考えればよいことです。

 

手戻りの回数と規模を勘案して、私は課題解決の難易度を次のように定義しました。

 

難易度の低いものがレベル1で、数字が大きくなるに連れて難易度が上がります。

 

レベル1  手戻りは発生しない

レベル2  手戻りは数回発生するが、どれも小規模である

レベル3  手戻りは数回発生し、その中には中規模なものが含まれる

レベル4  手戻りは数回発生し、その中には大規模なものが含まれる

もしくは、手戻りが多発するが、それらは中規模に留まる

レベル5  手戻りが多発し、その中には大規模なものが含まれる
               もしくは、それ以上

レベル6  手戻りどころか、課題認識や課題解決の方針からやり直さなければならない

 

※ 手戻り回数を “数回” にするか “多発” にするかの閾値は個別に決定します。

※ 手戻りの規模について…

“小規模” はプロセス全体の概ね1~2割程度の手戻り

“中規模” はプロセス全体の概ね3~5割程度の手戻り

“大規模” はプロセス全体の概ね5割以上の手戻り

 

課題の難易度に目安がつけば、あとは計画するだけです。難易度に応じた課題解決の期間を計画に盛り込むわけです。最初はあまりあてにならないかもしれませんが、計画と実行を繰り返しているうちに精度が上がるはずです。

 

難易度を検討しているうちに頭の中が整理され、手戻りという名の試行錯誤の輪郭が浮かび上がってくることもあります。その場合は、試行錯誤の内容を、想定した回数分ほどWBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図とも呼ばれ作業を大雑把なものから詳細なものへとツリー構造に洗い出したもの)に盛り込んでみてください。どこまで戻ることになりそうなのかも予測します。これが課題解決のシナリオということになります。

 

このようなやり方であれば、課題の種類に関わらず、実践的に活用いただけるはずです。

計画の過程で思いがけず気付いてしまった課題には、ついつい見て見ぬふりをしたくなるのが人情です。しかし、実行段階に入ってから、それが大問題を引き起こすことはよくあります。

対応に困り、頭を抱えてしまったときに、ぜひ試してみてください。

 

 

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