計画の技術

「小手先ではなく、すべての計画領域に共通する根本的な計画力があるはずだ」

「成功事例を鵜呑みにする」は計画嫌いゆえの失敗だ(1/3)

 

私は職業柄、お客様の変革活動に関わることがよくあります。

そんな私が20年以上も前から感じている問題意識について書きます。

その問題意識というのがこれです。

 

「欧米の成功事例を鵜呑みにして失敗を重ねる日本企業の愚かさ」

 

私たちの身近にある日本企業の多くは、バブルが崩壊した1990年代あたりから急速に世界での競争力を失いました。それがあまりに衝撃的であったためか、私たち日本人は欧米企業を賛美するようになりました。

遅れをとった日本企業は、欧米の成功事例に強い関心を寄せ始めます。

 

「うまくいっている人たちがいるなら、それを真似すればいい」

 

その結果、大企業を中心にブームとなったのが海外の成功事例の模倣でした。

2000年に本格的にコンサルタント活動を開始した私はすぐに、これが “猿まね”と呼ぶべき

表面上の模倣に過ぎないことに気づきました。

 

多くの大企業がIBMやGEといった “勝ち組” 米国企業の研究に明け暮れ、成功の秘訣を炙り出そうと必死でした。しかし、結果的に、それは組織体制、IT、業務プロセスといった表面上の模倣に終わり、自分たちの良いところまで失ってしまうという最悪の結果につながりました。

 

今回の話は、ブログ “計画の技術” らしく、計画の目線で思いを綴ることにします。

 

私たち日本人はそもそも計画嫌い(=実行重視)で、計画ナシのままいきなり施策を実行に移すというパターンに慣れてきました。このパターンでは、変革をリードする数名の人たちが常日頃に感じている不満や思い込みが色濃く施策に反映されてしまいます。しかも、そのような人たちは、結果がどうあれ、それまで議論してきたことの良し悪しを振り返ったりはしません。

 

  1. 欧米の成功事例を目の前に、これを自分たち(日本企業)に導入すれば何が起こるのか、それを冷静に判断することはない。
  2. 施策が思うような成果を上げていなかったとしてもその理由を探求しようとはしない。探求しようにも、その足掛かりとなる計画がないのだから、できることは限られる。

 

高度経済成長期以降、日本人のDNAには「技術で追い越せ」の精神が刻まれています。追い越す対象が “技術” だったころは、猿まねが成功しました。まじめで緻密な国民性を、当時の格安な労働力が下支えして、猿まねは経済成長の原動力になりました。

 

ところが現代は、追い越す対象は “技術” ではなく “仕組み” です。

 

この違いに気づかなかったあたりが、計画嫌いで全体を俯瞰することの苦手な私たち日本人の致命的な欠点です。

 

多くの日本企業がこのパターンで下手くそな変革活動を積み重ねてきた結果、私たちは世界に後れを取ることになりました。

 

もし、欧米の成功事例がそのままの姿で日本企業に通用するものであったとすれば、猿まねは、高度経済成長期よろしく、またしても功を奏したに違いありません。

ところが、実際はそうではありませんでした。

欧米企業と日本企業の間には決定的な間違いがあったのです。

この違いに気付いた日本人がいなくはなかったのですが、多数派はこの少数派の警告を無視してしまいました。

 

こうして、日本経済の失われた30年は始まりました。

失われた10年は、失われた20年と呼ばれるようになり、今では失われた30年となってしまっています。いずれ、失われた40年と呼ばれるようになるやもしれません。

 

3回構成の2回目となる次回は、追い越す対象が “技術” ではなく “仕組み” に変わったことで、日本企業はどのような失敗を犯すことになってしまったのかについて書きます。

 

 

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