前回は、日本企業の失われた30年について話しをしてきました。
私は、バブル崩壊後の日本企業の低迷がこれほど長く続いている理由のひとつは、日本企業が後先を考えず、欧米企業の成功事例の猿まねに走ったことだと考えています。
「うまくいっている人たちがいるなら、それを真似すればいい」
程度の差こそあれ、多くの日本企業はいまだにこれを続けています。
高度経済成長からバブル期まで、日本企業を支えたのは技術革新でした。そして、その背景にあったのが日本の現場の情熱と工夫でした。
ところが時代の流れとともに、成長のあり方は変化しました。
“技術” から “仕組み” へ
この変化が日本企業の成長エンジンを破壊しました。
仕組みといっても現場の細やかな仕組みではありません。それは、企業や業界をグローバルに取り巻く全体最適の仕組みです。
仕組みの背景にあるのは個人の工夫や情熱ではなく組織のガバナンスです。
さらにその向こう側には組織の文化や価値観が存在します。
欧米の成功事例は欧米人の文化や価値観の上で成立していたわけで、世界でも異質な存在の日本人(日本企業と言い換えてもいいですが…)が欧米人と同じようにやったところで、それがうまくいく保証はどこにもありません。
実際に、多くの日本企業は欧米の成功事例をそっくりそのままに真似しようとしましたが、結果的には様々な軋轢や不満が生じて定着できませんでした。
私の目に映る日本企業の変革は、組織の文化や価値観を完全に無視したものでした。
それどころか、有無を言わさずに欧米型の定着を図った組織では日本企業の良さは破壊され、活力は失われました。無計画かつ中途半端な押し付けが、現場に根付く日本企業のよい文化、世界に誇れる価値観を傷つけてしまったわけです。
その結果としてあるのが、今の悲しい現実です。
私は、成功事例を学ぶことを完全否定しているわけではありません。私たちがゼロから変革活動を積み上げたのでは、おそらくトンチンカンな方向に話しは進んでしまいます。欧米の成功事例は、目指すべき方向性やゴールのイメージを私たちに示してくれます。
これは猿まねとは違います。
なぜこうなってしまったのか。
その根底には、日本人の計画嫌いがありました。
何事もそうですが、変革活動に取り組む場合も然り、そこには計画が欠かせません。
しかも、物事を大きく動かすとき、大切なのは具体的で細かな計画ではなく、全体像を俯瞰して方針を固めるための大雑把な計画です。冷静に全体を俯瞰すれば前提の違いに気づき、成功事例の背景に日本企業とは全く異なる組織の文化や価値観があることに違和感をもったはずです。多くの変革リーダーたちは、欧米企業との文化や価値観の違いを分析しようと考えたはずです。
ところが、現実はそうはなりませんでした。
猿まねに問題意識をもった人はいたかもしれませんが、彼らの意見は計画性に欠け、経営陣を巻き込むには至らず、結果的に組織を動かすことはできませんでした。
さて、最後となる次回は “欧米企業と日本企業の間の決定的な間違い” を説明し、これと計画との関係について掘り下げます。
ぜひご期待ください。
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