計画の技術

「小手先ではなく、すべての計画領域に共通する根本的な計画力があるはずだ」

結局のところ、大事なのは計画に対するチームメンバーの当事者意識である(2/2)

 

前回は、計画作成に苦労した経験談をお伝えしました。

計画重視を声高に叫んだところで、多忙を理由にプロジェクトマネージャやリーダーたちは計画に時間を割こうとはしません。

 

「今は忙しいから」

 

これが、彼らが計画に時間を割かない理由ですが、プロジェクトが本格化した後は、間違いなく、さらに忙しくなります。段取りの悪さに起因する社内調整や客先対応で忙殺されるからです。

 

さて、やっとの思いで一通りの計画を終わった私たちでしたが、本当の問題はそこからでした。

チームメンバーたちは、計画の内容を理解せずにプロジェクトワークに没頭していたのです。これでは、計画した意味がありません。

 

 

メンバーたちがタスクの中身を理解していない

 

チームメンバーたちが計画をまったく意識せずに作業をしていることが発覚した翌週から、私たちは会議室を抜け出し、チームメンバーが集まるプロジェクトルームに舞台を移しました。そして、仕事をしているメンバーひとりひとりに話しかけては空き時間を聞き出し、進捗状況の確認と計画内容の周知を徹底しました。

 

それでも問題は続きました。

期限を踏み越えたタスクが、その翌週も、さらにその翌週も、まったく進捗しないのです。

忙しくて着手できなかったというのが彼らの言い分でした。

 

あるとき、プロジェクト成功の鍵を握るあるメンバーに話しかけました。

彼の作業は当初の開始予定日を踏み越えて着手できない状況が続いており、背水の陣で臨まなければならないところまで追いつめられているはずでした。

 

「先週、計画内容を確認していただきましたが、計画通りにやり切ろうという意思はありますか?」

 

そう尋ねると、暫くの沈黙の後に驚く言葉が返ってきました。

彼は、私たちが示した計画表を眺めながら、離れた席にいたプロジェクトマネージャに話しかけました。

 

「鈴木さん(プロジェクトマネージャの名前)、このタスクってどんな中身でしたっけ?」

 

彼はこの期に及んでもなお、作業の中身を理解していなかったのです。

この状況は、プロジェクトマネージャやチームメンバーだけの責任ではなく、支援してきた私たちの責任でもありました。

そう気付いた瞬間、私は胃がキリキリと痛くなりました。

 

 

責任は、計画づくりにチームメンバーを巻き込めなかった私たちにあった

 

原因は、計画づくりにチームメンバーを巻き込めなかった私たちにありました。

プロジェクトが実行フェーズに移り、私たちは計画内容を彼らと共有しました。しかし、その時点で、プロジェクト関係者の“計画に対する無関心”という取り返しのつかない状況は既に発生していたのです。

 

表面化したのは、計画の中身に対するメンバーたちの不理解でした。

しかし、決定的に欠けていたのは、計画に対する彼らの当事者意識でした。計画は彼らのものではなく、他人が勝手に作成した、まさに他人事だったのです。

これが事実であり、プロジェクトが計画通りに進まない理由の本質でした。

 

 

当事者意識を養うために、私たちはやり方を変えた

 

プロジェクトが次のフェーズを迎えるにあたり、私たちはやり方を変えました。

 

フェーズ移行に向けて多忙を極めるプロジェクトマネージャとリーダー、チームメンバーたちを呼びだし、一緒に計画をつくり上げました。

「首に縄をかけてでも」という言い回しがありますが、この時は一筋縄ではいきませんでした。私が頼りにしたのはこれまでに築き上げてきていた幹部たちとの信頼関係でしたが、この時はそれがものを言いました。

計画作成会議には部門の責任者も同席ました。

事情を知る関係者たちは、それほど追い詰められていたのです。

 

会議の中では、できていないメンバーには、できていない理由を慎重に聞き出しました。頭ごなしに叱るでも、問い詰めるでもなく、いっしょに解決策を考えました。

同席した責任者たちには、けっして高圧的な態度をとらないように、事前に言い含めておきました。彼らは必要に応じて負荷分散に向けたアイディアを口にし、その実行に向けて自ら行動しました。

場合によって、私たちはメンバーたちの負担に配慮し、ひとりひとり呼びだしては担当領域の計画を立ててもらいました。

 

 

計画は、メンバーたちに目的意識とやる気を吹き込んだ

 

計画を立てる過程で、彼らの間では、さまざまな質疑応答や議論が繰り広げられました。

プロジェクトマネージャの経験不足を補うために経験豊富なエキスパートにも同席してもらい、都度、アドバイスや問題点の指摘をしてもらいました。

 

こうやって完成した計画は、次のフェーズを進めるにあたっての背骨となりました。問題が発生しなかったとは言いませんが、有事の際にも状況をタイムリーに把握できていたため、すぐに対策を練り、行動に移すことができました。

前のフェーズとは、まさに雲泥の差でした。

 

私が「計画づくりにはチームメンバーを巻き込もう」と主張する根拠に、多くの人は共感してくださるはずです。

 

 

 

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