計画の技術

「小手先ではなく、すべての計画領域に共通する根本的な計画力があるはずだ」

計画は “効果” と “効率” の絶妙なバランスの上で成り立っている(2)

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前回は「計画は必要か、それとも不要か?」という問いかけから始めました。

この答えは “効果” と “効率” の絶妙なバランスにありました。

 

計画の効果 = 確実な目標達成

計画の効率 = 計画の手間

 

今回は、これについて深堀します。

 

計画肯定派を増やすためには、肯定派が考える “効果” と “効率” のバランスを、計画の詳細度なり進捗管理の頻度なりにうまく表現しなければなりません。

つまり、バランスを考慮すると計画は詳細化しすぎてはいけませんし、進捗会議は頻繁にやりすぎてはいけません。

 

まずは計画の詳細度について考えてみましょう。

例えば仕様書を作成するような場合、私は次のように作業を列挙します。

 

仕様書作成で洗い出された作業の例

  • 類似の事例から情報を収集する
  • 既設計流用の範囲と新規設計の範囲を検討する
  • 既設計を流用するために過去情報を収集する
  • 新規設計に向けて要求仕様を検討する
  • 仕様書を作成する

 

さらに「類似事例から情報を収集する」という作業を更に詳細化すると次のようになります。

 

「類似事例から情報を収集する」という作業を更に詳細化した例

  • 有識者の時間を確保する
  • 有識者に類似事例を特定してもらう
  • 類似事例に関連するドキュメント類の内容を調査する
  • 有識者ヒアリングをかけ、情報を補う
  • 収集した情報をドキュメントにまとめ上げる

 

私はたいていの場合、これほどの詳細化は行いません。

担当者が不慣れで具体的な手順を指導する必要があるならまだしも、これでは計画の目的を逸脱して業務指示の領域に足を踏み入れています。

 

このレベルの作業は組織の業務標準として整備しておきたい内容であり、業務標準を理解していることを前提に計画を作成すればいいだけのことです。

 

もし指導が必要だとしても、それは計画として書き出すのではなく、フェイス・ツー・フェイスの議論を通じて行うべきです。

 

続いて進捗管理の頻度ですが、例えばプロジェクトマネジメントの場合、私はたいてい週次を基本単位としています。毎週月曜日の午前中に進捗会議をやるといった具合です。

 

この周期でうまく回すためには、進捗会議から次回の進捗会議までの過ごし方を工夫する必要があります。この間は、進捗報告させたり、計画変更したりしてはいけません。つまり、1週間、計画を放置するわけです。

 

これは、この1週間を現場のひとりひとりに権限委譲したことを意味しています。

 

彼らは、自分たちに割り当てられた作業を次の進捗会議までに完了しさえすればよい、ただそれだけです。作業の順序や時間配分はひとりひとりの判断に委ねられます。

 

1週間の権限委譲は現場の解放感に繋がります。

こうすることで、計画を「自分たちの自由を奪う窮屈な存在だ」と忌み嫌う否定派はかなり減るはずです。

 

しかも、これは “プロセス” ではなく “リズム” です。

 

毎週、決まった曜日の決まった時間帯に進捗会議を行う。

次回までの1週間は、計画の遂行に全精力をつぎ込む。

進捗会議の後は、新たな気持ちで次の1週間を迎える。

私たちにはリズムが必要で、リズムは習慣につながり、習慣は安心感や帰属意識につながります。

 

「それが結論なら、1週間の中身を作業レベルで洗い出す必要すらないのではないか?」

 

こう疑問を持つ方がおられるかもしれませんが、私はそうは思いません。

 

要は、計画の信頼性の問題です。

 

計画の目的は「このまま今のペースでやっていて目標を達成できるのか」に答えを見出すことです。そのためには、適切な詳細度で作業を洗い出し、依存関係を設定し、必要な作業時間や期間を積み上げることが必要です。

そのために、適切な詳細度まで詳細化するのです。

 

2回に渡り書いてきましたが、結局のところ、私たちは計画に熱中している最中でも “効果” と “効率” の絶妙なバランス” を心がけなければなりません。

これは統制(≒計画)か自由(≒現場力)かという論争に対する私の答えです。

 

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