トップダウンでいくべきときか、ボトムアップでいくべきかの判断は計画に盛り込んでおくべきです。
欧米型のトップダウンでなければ世界に取り残されるだとか、ボトムアップ型でなければ現場の強みを生かせないだとか、そんな問題ではありません。トップダウンとボトムアップのどちらが効果的なのか、それを計画段階にケース・バイ・ケースで判断することが大切です。
このテーマの最終回となる今回は “すり合わせ” と “権限移譲” について話をします。
“すり合わせ” と “権限移譲” はトップダウンでもボトムアップでもありませんが、トップダウンやボトムアップと近いニュアンスでよく使われます。
それゆえ、皆さんが現場で「トップダウンかボトムアップか」の判断に迫られたとき、これらの言葉は皆さんを翻弄するに違いありません。
目標設定での “すり合わせ” は目標を骨抜きにする
ボトムアップと似たニュアンスの言葉に “すり合わせ” があります。
すり合わせは日本企業の強みのひとつですが、これは実行段階の話であって、目標設定でのすり合わせは目標を骨抜きにします。
なぜなら、目標は外部環境との折り合いの中で必然的に決まるものであって、自分たちの都合で決めてよいものではないからです。
現場とすり合わせた結果、目標は実現可能なものになりますが、その反面、現状を容認した妥協の産物にもなりかねません。
たとえ目標は達成できても、すり合わせによって目標を低く設定してしまった組織は、厳しい事業環境の中で競争に敗れてしまいます。
「目標がアグレッシブすぎては、現場がやる気を失ってしまいます」
これは目標設定段階の “すり合わせ” を擁護するときに使われる一節ですが、ビジネスのある一面を安易に切り取ったにすぎません。こんな風だから、私たちは欧米企業に勝てないのです。
すり合わせが効果を発揮するのは、目標達成に向けて現場が知恵を出し合い、ギリギリのバランスでそれらを実行に移すときです。
ここまでは、意思決定をトップダウンとボトムアップの二者択一で説明してきたわけですが、これですべてが片付くわけではありません。なぜなら、ビジネスには “権限委譲” が付き物だからです。
権限委譲はトップダウンと違って現場のやる気を損ないませんし、ボトムアップのようにスピード感に欠けることもありません。ただし、権限委譲は移譲先の判断力や実行力によって結果が大きく左右されます。
しかも日本企業には、カタチだけの権限移譲がそこかしこに蔓延っています。
ビジネスで権限と言えば人やお金を動かす力のことですが、成すべきことの重大さや難易度とは釣り合わない不十分な “権限” しか与えられずに、大きな “責任” だけを押し付けられるケースが私たちの周りにはよくあります。
「君は命令できる立場にあるのだから… 」
こう言い放つ上司は信用できません。
日本企業には、口だけの「権威」、カタチだけの「権限」が付き物です。
権限移譲という言葉に不信感や偽善的イメージが付きまとうのも無理ありません。
役員 「○○の件はどうなりましたか?」
部長 「その件なら△△課長に任せました」
外部の人間である私から見ても「△△課長にそれは荷が重すぎるだろう」と思うような事案を、権限移譲の名のもとに部下に放り投げ、そのあとは他人事のように振る舞う上位管理者を、私は嫌というほど見てきました。
成すべきことの難易度に相応しい人物に適切な権限とともに引き渡す、それが正しい権限移譲のあり方です。
しかも、権限移譲した後も、権限移譲した側は、移譲後の成り行きを常に気にかけていなければなりません。任命責任はしっかりと果たすべきです。
競争激化の現代において、事業運営にはスピード感や高い成長率が欠かせません。しかし根っこの部分では、トップダウンで力を結集しなければならないシーンもあればボトムアップで現場の力を引き出さなければならないシーンもあります。
つまり実行に効く計画を立てる上で、計画段階のトップダウンとボトムアップの使い分けは欠かせない要素なのです。
トップダウンかボトムアップか、この判断をその場の空気感に委ね、曖昧なままに流されている様子を私はよく目にします。そこで働く人々は、失敗の原因が、トップダウンとボトムアップの判断ミスにあることに気付きません。
トップダウンかボトムアップか、これは計画段階の早い段階に決めておくべきことです。
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