計画の技術

「小手先ではなく、すべての計画領域に共通する根本的な計画力があるはずだ」

計画を「全体計画」と「詳細計画」に分けて考えると、実行段階の大きな失敗は「全体計画」が原因だった

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プロジェクトで計画作成といえば詳細なWBSに基づく日程計画やリソース計画というイメージが強いですが、私はこれらを「詳細計画」と呼び、計画作成フェーズの後半に位置付けています。これに対して、フェーズ前半に位置付けているのが「全体計画」です。

全体計画でこけると詳細計画作成作業は混乱を極め、結果的に、細々とした内容を書き並べただけの煩雑な計画で終わってしまうか、その逆にカタチだけの空っぽな計画が中途半端に放置されるだけです。

 

全体計画をひと言で表現するなら「プロジェクトの概念化」となります。

 

全体計画フェーズで、私たちは計画対象物の全体像を描き出し、前提条件を再確認し、計画方針などを決めます。そして、これらの成果物をプロジェクトの関係者と合意します。

 

[全体計画フェーズの主なアウトプット]

  • 計画対象物の全体像
  • 計画を立てる上での前提条件、計画する上での根拠
  • 計画する上での優先順位
  • 計画方針や計画が対象とする範囲
  • 詳細計画の序盤で検討すべきこと、もしくは詳細計画の中で議論すべきこと
  • 詳細計画で表現してほしいこと、詳細計画のアウトプットイメージ

 

全体像とはすなわち、計画対象物を構成する大まかな構成要素とそれらの依存関係、親子関係、包含関係などをモデル化した概念モデルを指します。

 

前提条件や根拠には、外部から提供されるものと、私たちが自ら設定するものがあります。外部から提供されたものならいざ知らず、自ら設定した前提条件や根拠を計画の一部として書き留めておく習慣がない人は多いので、意識して心がけておかなければなりません。

多岐にわたる詳細計画では、さまざまなトレードオフが明らかになります。それもあって、詳細計画に突入すると細かなことに心を奪われ、大局的に全体を俯瞰することが難しくなります。こうなってしまっては後の祭りです。プロジェクトは場当たり的に迷走を繰り返すことになってしまいます。

 

プロジェクトには多くの人が関わるため、属人的に掻きまわされてしまうことがよくあります。このような状況を避けたいなら全体最適の観点から優先順位を設定しておくことが大切です。詳細設計フェーズで迷ったときにはこれが判断基準となります。

実は、優先順位設定のチャンスは、全体計画段階にしかありません。詳細計画段階にやろうとしても、すでに顕在化してしまった関係者の利害が複雑に絡んで、うまくいきません。

 

計画方針とは、どのような人たちと、どのような流れで、何を足掛かりに詳細計画を立てるかの方針です。

方針を立てるには、事前に計画の対象範囲を決めておかないといけません。さもなければ、方針決定の議論が混乱してします。

 

詳細計画の序盤で検討すべきこと、もしくは詳細計画の中で議論すべきことを洗い出して文書化しておくことは、全体計画を行う最大の狙いです。これを明確にしておくことで、詳細計画を論理的に、無駄なく進めることができます。

 

詳細計画フェーズでは、たいていの作業は手分けをして進められます。全体計画のアウトプットはメンバーの属人性を軽減するのに役立ちますが、完全に消し去ることはできません。

最終的に効果的なのは、計画の到達点となる計画アウトプットのイメージです。何を表現すればいいのか、どのようなかたちに表現すればいいのか、これが示されていればメンバーは詳細計画に没頭できるはずです。

 

ついでに詳細計画フェーズの代表的なアウトプットも挙げておきましょう。

 

[詳細計画フェーズの主なアウトプット]

  • 全体計画で描き出された全体像を小分けにし、さらに詳細化した概念モデル
  • 全体計画の結果、詳細計画の中で検討、議論すべきとされた項目に対する結論
  • 詳細なスケジュールやリソース計画、役割分担
  • 詳細な予算計画や資金調達計画
  • 実行フェーズで検討、議論すべきこと
  • 実行フェーズで得られる、最終的なアウトプットのイメージ

 

さあ、皆さんも全体計画から始めましょう。

細かいことに気を取られ、目の前のことから手当たり次第に計画するのは、計画下手のやることです。

 

 

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