計画の技術

「小手先ではなく、すべての計画領域に共通する根本的な計画力があるはずだ」

計画する目的を明らかにして “計画への迷い” を振り払え! 私の場合は “今のイメージのままでゴールを達成できるのか” を判断すること (2)

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さて、前回は計画の目的について共有しました。

私の考える「計画の目的」はこうでした。

 

「今のイメージのまま進めていて、私たちは、果たしてゴールを達成できるのか?」という問い掛けに、納得いく答えを導き出すこと

 

今回はその続きです。

私は自身の経験をもとに、さらに具体的に考えてみました。

 

かつて、こんなことがありました。

 

[ケース1

そのときは1時間で計画を完成しなければなりませんでした。

プロジェクトリーダーは、いつも通りに詳細に作業を洗い出し、それらの作業ひとつひとつに担当者を決め、作業時間を見積もろうとしていました。不慣れなメンバーひとりひとりに、作業手順を細かく指示するためでした。しかし、こんなことを続けていたのでは時間切れになってしまいます。

そこで、私は言いました。

 

「計画の目的はいろいろですが、一番大きな目的は実現性の評価です。実現性を評価できさえすれば、今のような差し迫った状況下では、作業の詳細な洗い出しは必要ありません。メンバーが作業の中身を理解していないのは大問題です。しかし、その解決には時間がかかります。メンバーが作業の中身を理解して計画を実行に移せるようになるまで、別途、時間をかけて話し合ってください。ここは、実現性を評価するための場です」

 

私は説得を続けました。

「進捗会議から次の進捗会議までの間はメンバーに与えられた時間です。この時間を有効に過ごすためには、メンバーひとりひとりが自分に与えられた作業の中身を理解していなければなりません。しかし、計画内容を見ただけで各自それを理解しろというのは無理な話です。計画は詳細に記述された作業指示書ではありませんし、皆さんのコミュニケーションにとって代わるものでもありません。別途、十分な時間を確保してください」

 

[ケース2

そのプロジェクトは納期が2カ月後に迫っていましたが「線表」と呼ばれる大日程計画があるだけでした。目の前の作業の山に翻弄されていたプロジェクトリーダーは、計画に割ける時間はわずかだと主張していました。

いつもなら、詳細に作業を洗い出したあとに担当者を割り当て、作業時間を見積もります。過負荷にならないように調整すれば日程は自ずと決まります。ところが、それには相応な計画時間が必要です。プロジェクトリーダーに許された時間は少なすぎました。

 

私は彼にこう提案しました。

「ある程度の詳細度で作業を洗い出した後、作業ひとつひとつに『期間』を見積もりましょう。完成した計画は十分ではありませんが、あなたがそのリスクを負えるなら、まずはこの計画で走り始めましょう」

 

私たちは大雑把に作業を洗い出し、担当者の負荷を無視して、プロジェクトの日程計画を作成しました。

そのとき、プロジェクトリーダーは私にこう言いました。

「このままでは、私は自信がありません。少なくとも直近2週間の作業に関してはさらに作業を詳細化し、ざっと作業時間を積み上げてみたいです」

 

作業時間を積み上げた結果、数名に過負荷が発生しました。プロジェクトリーダーはメンバーを集めてこう言いました。

「直近の2週間が勝負です。この間は、いつもお願いしている報告資料は作成しなくていいです。私が責任をとるので、皆さんはプロジェクトに専念してください」

 

[ケース3

あるプロジェクトリーダーが私に言いました。

「浦さん、今日はこれから、週末までの作業をさらに詳細化しようと思います」

 

私は尋ねました。

「担当者たちは、週末までに自身のやるべきことを理解できていないということですね?」

 

すると彼はこう言いました。

「いいえ、そんなことはありません。皆、作業イメージは持っています。ただ、今の計画にはそれが大雑把にしか表現できていないのです」

 

私は彼に言いました。

「結果が同じなら、計画の詳細化に時間をかける必要はありません。担当者が作業を正しくイメージしているのなら、今の計画のままでも問題は発生しないはずです。私たちが数時間かけて詳細化したところで、その計画は週末までに実行に移され、過去のものとなり、価値を失います。詳細化に要する数時間に価値はありません」

私たちは、計画の詳細化に貴重な時間を費やすのを止めました。

 

プロジェクトマネジメントでは、メンバーの過負荷が納期遅延につながることはよくあります。本来なら、過負荷が解消するまで何度も計画をシミュレーションすべきです。

しかし、もし時間に余裕がないのなら、まずは翌週の負荷状況とスケジュールの余裕度合いに目を向けてください。もし、翌週の負荷状況とスケジュールに余裕があるなら、計画を今のまま放置して、計画時間を節約するという選択肢もあります。

翌週の進捗会議では遅延が報告されるでしょうが、その遅延は数週間のうちに吸収可能なはずです。

 

いかがだったでしょうか?

計画には迷いがつきものです。

計画をどこまで詳細化すべきか、計画作成にどれほど時間をかけるべきなかの判断は簡単ではありません。

 

「今のままで、私たちはゴールを達成できそうなのか?」

 

迷える計画者にとって、これはとても大切な質問です。

この判断を下せるか否かは、迷いを振り払うためのひとつのヒントとなるはずです。

 

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