計画の技術

「小手先ではなく、すべての計画領域に共通する根本的な計画力があるはずだ」

[計画の技術]想像する(imagine) ~ 情報不足を想像で補うからこそ計画になる ~

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私は計画のポイントを「ODISQ(オーディスク)」と表現します。

 

O         俯瞰する(overlook)

D         決める(determine)

I         想像する(imagine)

S         構造化する(structure)

Q             問い掛ける(query)

 

今回は「想像する(imagine)」を深堀します。

 

計画には先を読む力が欠かせません。過去にはこれを予測と言ったり、推測と言ったり、想像と言ったりしてきましたが、これからは「想像(imagine)」に統一します。深い理由があるわけではなく、計画することへのハードルを少しだけでも下げたいという私の思いからです。予測や推測という言葉の響きからは、高いスキルの必要性を感じてしまうひともいるはずです。ともすると、計画に真摯に取り組もうとする気持ちを落胆させてしまう言葉でした。

「計画するに当たり、もっと自由に発想し、肩の力を抜いてほしい」

そんな思いから「計画の技術」を象徴する言葉としては「想像」がふさわしいと考えました。

 

そんなわけで、さっそく「計画にはなぜ想像が大切なのか」という話を始めましょう。

 

確実なことを書き並べるだけでそれを計画だと勘違いしている人が、私の周りにはたくさんいます。そんな人たちは決まって「情報が不足していて計画できない」と口にするわけですが、そんなことではいつになっても計画を始められません。

 

「私たちのプロジェクトは他とは違って、プロジェクト開始時点ではほとんど情報がありません。だから、よく言われているようなプロジェクトマネジメント(=計画)は私たちには無理なのです」

 

よく耳にするセンテンスですが、開始時点に必要な情報がすべて揃っているプロジェクトなんぞ、これまでにお目にかかったことがありません。程度の違いは認めますが、私に言わせれば、それが計画不能につながることはありません。それは「計画不能」ではなく「計画拒否」であり、そのひとの個人的な問題です。

私はこれまで、そんな人たちを計画に導いてきました。焦らず、ひとつひとつ紐解いてあげることで彼らは口を開きました。

 

ペースがつかめるまで、彼らにはこう言い聞かせました。

「ゆっくりでいいから、しっかりと想像してみてださい。その時点に自分を置いて、思い描いてみてください。何が起こっていますか? あなたはそのとき、どう行動しますか?」

私はこのような思考プロセスをウォークスルーと呼んでいます。

結果的に彼らは、情報不足を想像で補い始めました。

 

            「仕様を決めるために、まずは何をしますか?」

プロマネ「今回の機器は新規性が高いので、やってみなければ何が必要なのかわかりません」

            「通常なら何をするのですか?」

プロマネ「実績のある機器であれば、昔に書いた仕様書を頼りにざっくりと仕様を決めます」

            「なるほど。でも、お客様への提案はすでに終わっているのですよね。そのときは、何らかの仕様を前提にしたはずです。どうやって前提となる仕様を決めたのですか?」

プロマネ「あのときは関係者で議論して決めたのですが、確証があって決めたわけではありませんから」

            「改めてそのときのメンバーで議論すれば、仕様のイメージをざっくりと固めることができるのではないですか?」

プロマネ「その程度でいいのなら、メンバーで議論すればできると思います」

            「最初はその程度でいいんです。そこから始めましょう」

 

結局、この議論を通じて、メンバーたちはかなり具体的なイメージを持つことができました。手ごたえをつかんだ彼らは議論を積み重ね、そのたびに仕様は具体化していきました。こうしてでき上った機器の仕様とこれに基づく開発計画は各領域のリーダーたちに引き継がれ、プロジェクトが始まるころには具体的な実行計画へと姿を変えていました。

 

わからない箇所を想像で補おうとすると、頭の中のイメージは広がり、考えが深まり、これまでは姿を隠していたリスクがひょっこりと頭をもたげることもあります。それにより、場合によっては追加の情報収集を迫られることもありますが、逆にそれが周囲への働き掛けや組織的な構えのきっかけになり、行き詰まった状況を好転させることはよくあります。

それこそが計画の醍醐味なのです。

 

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